私は建築家として常に持ち続けようと
思っていることが3つあります。
建築家の大きな存在意義に第3者性があるといわれています。客観的な立場からクライアントの利益を守り、公平な判断をするよう心掛けています。
多くの情報が氾濫する今日、判断に迷うことが多いものです。クライアントの要望・意見を十分ふまえ、真に目的にあったものは何か、プロとして責任ある説明、アドバイスにより、十分なコミュニケーション・信頼関係を図りたいと思います。
ものをつくる上での基本として考えます。技術と芸術が融合し、現実としての適切な予算を踏まえることがプロとしての責務と思います。
建築の設計で最も大切なもののひとつにオリジナリティ(独創性、個性)があります。私は、「場所」、「ひと」、「時間」の個性からオリジナリティが自然に引き出されるような設計が理想と考えています。
「場所」すなわち環境条件は建物の特性を引き出す最初の手がかりです。敷地を訪れた瞬間アイデアが生まれることも多いものです。また、一般に負の条件と思われる環境がかえって斬新な個性を創出することもよくあります。
一方、建物には使うひと、住むひとの個性が表出されるべきです。自分たち固有の個性あふれる空間は体験するひとを元気にし、精神を健康にします。
住宅のような個別の設計においても、また大規模建築の設計や街づくりのような関わる人々が多数にわたる場合でも、同じようにできる限り深く広く関係者とコミュニケーションを図り、ひとの個性を引き出す設計をしたいと思っています。
建物の生命は、建設工事の完成で終わりではありません。企画・設計から工事完成まではその序章であり、完成後に長い使用期間があります。この期間での使われ方、メンテナンスのあり方などは設計時に考慮すべきもう一つの個性です。建物の目的、ライフサイクルをふまえ、「場所」、「ひと」の個性と総合して時間の個性がつくられ、あるべき空間に関し様々な発想の展開が可能になると思います。